大阪のオバちゃん、橋下市長

もう20年ほど前になるかなぁ。みなさんは関西地域で流れていた、迷惑駐車追放キャンペーンのCM(制作は公共広告機構)をご存知だろうか。道路の車線1つをほぼふさぐ迷惑駐車の列。その前で、駐車をとがめられたと思しき中年女性がカメラに向かってまくし立てる。

 

「みんなやってるやないの~。私だけちゃうやん、失礼やわ、もう!」。そこにナレーションがかぶさる。「おるおる、こんなオバちゃん」。その迫力・リアルさは、ひょっとして・・・実写か?と思わせほど強烈なインパクトがあった。

 

13年5月現在物議をかもしている米軍普天間基地訪問の際の橋下市長の発言、実はこの大阪のオバちゃんと、全く同じロジックなのだ。

 

談話では太平洋戦争当時の慰安婦制度の容認、米軍司令官に対する風俗業活用進言など、いろいろやらかしている。特にその中で『(慰安婦問題で)日本国が不当に侮辱を受けていることにはしっかりと主張しなければいけない』に注目したい。続く談話を抜粋する。

 

『なぜ日本の慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるのか。日本は「レイプ国家」だと、国を挙げて強制的に慰安婦を拉致し、職業に着かせたと世界は非難している。その点についてはやっぱり、違うところは違うといわないといけない。(中略)当時は日本じゃなくていろんな軍で慰安婦制度を活用していた。』

 

論理を構造化するとこうなる。

 1日本は慰安婦を制度として持っていたのは確かだ → 2ただしそれは日本だけではない → (しかし他の国は責められていない) → 3だから日本だけが非難を受けるのは不当だ

 

典型的な3段論法だ。そして、論拠「他の国だってやってたのにぃ」は「みんなやってるやないの~。私だけちゃうやん」と全く同じだ。ちなみに主張である3の「日本だけが非難を受けるのは不当」も、「失礼やわ、もう!」と同質だ。橋下氏は大阪のおっちゃんではなく、オバちゃんだったのだ。

 

え?この問題について私自身の見解を述べずにロジックだけを取り上げるのはズルいって?そうやねぇ、「最大の批判は声高に抗議することではない。笑いものにして世間にさらすことだ」と、『独裁者』を制作したチャップリンの言葉でも引用しときましょうか。