苦手意識って何だ?

やれやれ、あっという間に新しい年になってしまった。ちょうど大忙しの真っ最中で、実はブログを書いている余地もないぐらいなんだけど、去年書こうと思っていたネタで気分転換を兼ねて一言。


昨年末、とある研修会社で「文章力アップ講座」のプレゼン講座をさせてもらった。40名ほどの研修担当者のアンケートはおおむね好評だったものの、アンケートの中のひとつのコメントが目を引いた。


「ほとんど当たり前のことばかりで、目からウロコという部分は少なかった」


うーん、そりゃそうかもしらん。ムダをできるだけ省けとか、同じ言葉を使わずにできるだけ言い変えろとか、見出しは命とか、その担当者からすれば聞きあきた言葉だったのだろう。でも、その当たり前のことができる人間がどれだけ少ないことか。そうした、小さな気遣いを積み重ねると自然と相手にとって分かりやすい文章になるんだよ、でトレーニング法は、というのが論旨だったのだが。


ま、これは当たり前のことをさも目新しく見せる、「プレゼン」の技量不足の例であるかもしれない。だが同時に、年間1000件を超える他人の文章を見ている身として、言い添えたいことがひとつ。


実は、自称、文章書くのに苦手意識があまりありません、という人ほど主観の勝った文章を書く傾向がある。やたら表現が難しかったり、何かのスタイルを意識したりと(例えば何でもかんでも箇条書きで済ませるとか)、つまりは読みにくいことが多い。そして、きっちり自身を客観視できている人ほど「これって本当に伝わるんだろうか」と不安を訴えがちだ。


文章であれ何であれ、ものづくりにはもう一人の自分が必要だ。本当にこれで相手のニーズに合致しているのか、考えのヌケモレはないか、仕上がりはどうか。自らの肩越しから注意深く身守り、叱咤激励する分身がいてこそ、主客一致した状態が生み出せる。


苦手意識は悪いことではない。悪い点があるとすれば、ビビって何もできなくなってしまうことだけなのだ。そしてそれを払拭するには、とにかく当たり前のことを当たり前に積み重ねるしかない。と、自分自身にも常日頃から言い聞かせている。