ついこのあいだのことである。慣れないタスクを仕上げようと必死になっていたら「そんながんばらなくていいよ。適当に適当に」とアドバイスをもらった。なんちゅー不謹慎な、こんな重要な仕事を適当にできるかい、と右から左に聞き流し、生産性の低さを自覚しながらもがっつり4つに取り組んでいた。
その最中である。突然電話がかかって来た。こんな時に何用だ、と応対すると原稿作成中の人からの悩み相談だった。今月末に仕上げるはずのマス目が全然埋まらないのだという。つかみはこんな書き出しでいいのか、ざっくばらんな調子で押していくのか、まじめなトーンも交えた方がいいのか、申し込みの送り仮名は「し」と「み」でいいのか、と細かい点を矢継ぎ早に聞いてくる。私は答えた「ああ、適当でいいですよ。そんなにがんばらなくても」。
と言ったとたん自分で笑ってしまった。まるで鏡の一対である。相手はきょとんとした様子だったので急いで笑いを収めたが、要は、お互いに視野狭窄である。必死になりすぎて周りが見えていないのだ。原稿の場合であれば、とりあえず自分の言いたいことから離れないこと、既定の字数の前後で収めること、締め切りを守ること。文章自体に正解はないのだから、この3つだけ守っていればいいのだ。
とはいえ始めて取り組むことは、やっぱりガチに取り組むしかない。これらの原則が見えるのは、これまでの経験があるからこそなのだから。でもある程度、心の余裕を持つことが、ツボを外さないことにつながるような気がする。仕事だって就活だって、きっとそうだよ。