ものづくりという仕事

もし自分に前世があったとしたら、そこではおそらく「職人」ではなかったかとつねづね思っている。

 

現在、研修という先生業が半分を占めるものの、基本的にはものづくり(つまり文字や図画を使って、本やらWEBなど形のあるものに仕上げること)に充足感を覚える。そういえば子どものころ、図工の時間に仕上げた作品を、作りなおしたりバージョンアップしたりして、ひとり悦に入っていた。前職の金融業が長く続かなかったのも(といっても10年ほどは勤めたが)、「安心」という目に見えない商品がメインであったことが一因であろう。

 

私が勝手に考えるに、仕事のやりがいを感じる時には3つのパターンがある。ひとつは、完成の暁に受ける顧客あるいは周囲からの感謝がうれしい「ありがとう思考」。近頃の若年層によく見られる。ふたつめは、仕事の結果が自らの栄達がつながることを喜ぶ「エレベーター思考」。これは団塊の世代を中心とした昭和的性向である。最後に、仕事そのものの仕上がりにその人の満足がある「タスク思考」。「職人」タイプは超タスク思考と言える。

 

周囲のヨコ関係への配慮ではなく、組織へのタテ登りへの執着ではなく、仕事そのものにまっすぐ関心が向かう「職人」は貴重な存在であろう。ただ注意すべきは、こだわりのあまりオーバースペックになりがちなことだ。組織の中だと誰かが止めてくれるが、自営業だとそうはいかない。ということで、ものづくりの際、絶対に手を抜かないながらもも、細部にこだわりすぎないことを信条としている。「注・ガラパゴス化」である。