晴れの日はいつも、自宅から川べりを下ること数キロの自転車通勤である。「武庫川」という名のとおり、いつも無粋で無骨ないでたちだが、それでも今の季節は春らしい色めきを見せてくれる。
川面は、霞がたっているような風情で、気のせいか流れもゆっくりだ。広い中洲には鳥が騒いでいる。甲高い叫び声、歌うようなさえずり、つぶれたダミ声、声の種類も増えている。進路をふさいでいたハトの一群が、自転車に驚いて一斉に羽ばたく。雀にもそれに続く。
茶色ベースの河原に、ぽつん、ぽつんと黄色が見える。タンポポの季節である。河原にある菜の花の花壇は、わっと声をあげるような黄色で唱和する。そばを通り過ぎるとくしゃみがでた。鼻をくすぐるような香りがする。花粉だ。
風が冷たい。北風ではなく、東寄りの風だ。陽光にも圧力を感じ、フードを目深にかぶる。明日から日焼け止め指数をもう一ランク上にしよう。しっかりと口を閉じて走らないと、そろそろ虫が飛び込んでくる季節になるぞ。