学校学校事故・事件の被害者家族が記した『問わずにはいられない』。著者の一人である工藤さんご夫婦からお礼のはがきをいただいた。「8年に及ぶ民事裁判が、ようやく終わりました。全国の皆様方に支えていただき、共に声をあげ動いていただいた御蔭様です…ありがとうございました」とある。
事件は2009年夏、大分県立竹田高校の剣道部の部室で起こった。数時間にわたる練習で休憩はたった1回。主将であった剣太君はと剣道部顧問の「しごき」のターゲットになり、室温36度以上のなか熱射症を発症し、亡くなってしまう。
ふらつく剣太君に、顧問は「たるんどる!」と椅子を投げつけ平手打ちし、気を失えば立ち上がらせ、無理やり竹刀を取らせて打ち込みを続ける。剣太君は混濁した意識のなか、フラフラと戸口に向かって壁にぶつかり、仰向けに倒れて痙攣した。顧問はこの上に馬乗りになり「そげん演技は通用せん!」と叫ぶ。剣太君の目に最期に映ったのは、さらに血が壁に吹き飛ぶほどの往復ビンタを十数発加えた顧問の顔だったか、この凄惨な光景を「部活ってこんなもんかなとおもった」と傍観していた副顧問の姿なのか。
この顧問は、前任地の京都府舞鶴高校でも、暴力行為を繰り返し生徒に左じん帯断裂の重傷を負わせている。教師としての適正云々の前に、近所でうろついてほしくないレベルである。
公務員の過失に対しては、通常、個人の責任は問われず、国あるいは地方自治体がその賠償責任を負う。両顧問は数カ月の停職の後、教壇に戻った。工藤さんご夫婦は検察に申し立てを行ったものの、不起訴。やむなく民事訴訟に至った。提訴の後、顧問に対しては地裁が「重過失」を認めたのが2016年。県はすぐに控訴したが、翌年高裁で判決が確定した。
わが子が、大勢が見ている前でなぶり殺しされたとしても、そこが学校であれば、事実を認めさせるのに8年間。そんな国に、私たちは生きている。