最近「シワ、シミを制する!」「オトナの匂い対策、はじめませんか?」などのリスティング広告にがやたら現出するようになった。パソコンにこんな忠告を受ける年まで生きた、という感慨の一方、中途半端な年齢に困ることもある。着るもの、のことだ。
ここ数十年、体型がさほど変わらないのは、安上りでたいへんに結構である。しかし、若いころ好んで着ていたタイプの色や形が、似合わないと感じることが増えた。そこで参考のため、通勤電車で同年齢と思しき女性のファッションを観察することにした。
観察によると、ファッションに敏感な層は、微妙に2タイプに分かれる。「若々しい」と「若づくり」である。努力を尽くした結果、前者は見かけ年齢<実年齢に成功、一方、後者はイタさを感じさせたうえに、見かけ年齢>実年齢に見えるのだ。なぜか。
これはおそらく、ご本人たちの「メタ認知」の違いだ、と推察する。
メタ認知とは、「自分を客観視できる能力」である。ハイパフォーマーのコンピタンスとして知られているが、普通の人でもなければ不便な能力だ。たとえば、道路上で自分の立ち位置がメタ認知できなかったら、通行を妨げ、必要以上に人に突き当たられる。
つまり、先述の「若々しい」タイプは、見られる自分を客観的に見ている。若さに価値を置く世界では勝負できない。そこを心得たうえで、自分の魅力を最大限に活かす装いは何か熟知し、その知を活用している。まさにメタ認知力の勝利だ。
そんなことを考えながら輪行バックを肩から下げて駅のホームを歩いていると、後ろから駅員に呼び止められた。
「そこのボク、輪行バックのチャックは、最後までちゃんとしめてから電車に乗ってね」
野球帽と輪行バック、ジーンズはメタ認知的には「小中学生」だったか。究極のイタい若づくりであった。