明子:お父さん、今日は珍しいものを買ったの。
一徹:なんじゃな?
明子:うふっ、宝くじよ、秋のビッグチャンスくじ。1枚2百円だけど一等は3千万なの。年末ジャンボくじに比べて当選確率が高いらしいわ。飛雄馬にも新しいグラブを買ってやれるかしら。
一徹:全部で何本売り出すのかな?
明子:確か300万枚だったかしら、1等前後賞がそれぞれ1千万円、1等組違い賞10万円が29本、2等30万円が90本、3等5千円が6,000本、4等1千円が3万本、5等30万本でも買った金額分の2百円がもらえるわ。それと、実りの秋賞が10万円が600本なの。
一徹:ふん、わが娘でも女とは話せんわい。そんなくだらんことでムダ金を使うとはな!
明子:まあ、ムダ金ですって?
一徹:当たり前よ。1等3千万円の当選確率は0.00003%、前後賞でも0.00006%じゃ。
明子:確かに小さな数値だけど、そんなに低い確率なの?
一徹:まさに天文学的よ。日本国内で交通事故で死ぬ確率は最近では0.003%前後。つまり、1等当選確率の100倍近くじゃ。
明子:まさか!
一徹:そもそも、宝くじ金額の払戻率は、50%以下と法律で決まっておる。80%以下とされておる競馬や競輪よりはずっと低い。
明子:なんてことかしら…。
一徹:明子よ、それぞれの賞の当選確率に賞金を掛けた和、期待値は87円。つまり払い戻し率は43.5%、これを見るだけですぐわかるじゃろう。ものを買うときには計算ぐらいせんか!
明子:お父さん、確率の計算を習うのは中学生以上なの。あたしはお母さん代わりにずっと家事をしてきたから、学校もろくに行っていないのよ。
明子、うつむく。一徹、にじむ涙を見られまいと天井をにらむ。