The Geek Shall Inherit the Earth.(オタクが天下を制す)とのことわざが米国にあるらしい。が、Geek=オタク、すなわち二次元種族を囲む生温かい偏見は、いまだわが国の三次元空間に満ちている。数こそ多いがマジョリティになれないマイノリティ、それが「二次元」であろう。
ところが、二次元(平面)よりさらに次元が低い一次元(線)、つまり文字と記号の世界に淫する輩への評価はまるで違う。
「読書家」「博学の徒」などと崇められ、学校の課題作文などでは、全生徒の目前で表彰状の贈呈をもって称えられる。普通のオタクよりさらに次元の低いオタクに文科省のお墨付きを与えるのはなぜか。世の七不思議である。
オタクに聖地は数々あれど、一次元オタクの聖地はただ1つ、図書館である。高い天井の下の沈んだ空気、しっとりとした紙の匂いは聖地の佇まいにふさわしい。
ドイツのウルムから数キロにあるヴィブリンゲン大学内にある、南ドイツで一番美しいという図書館。写真はその天井画である。かつては修道院付属の図書館として、ドイツで最大の蔵書数を誇ったらしい。字を読むことができるのは、近世までは教会関係者をはじめ、ほんの一握りの人たちだった。羊皮紙の書籍を抱え行きかう修道僧たちの姿を想像しつつ、キリスト教世界以外にも知が開かれた、21世紀のありがたさが身に染みた。