「のり弁」文書を作らないために

仕事柄、「のり弁」をよく目にする。

といっても食べるやつではない。モリカケ問題などでひんぱんにマスコミに取り上げられている、あちこちを黒く塗りつぶした公文書のことである。

 

公文書は、国民に対し政府の説明責任を全うする観点から、行政機関及び独立行政法人等が保有する文書についての開示請求権等を定めている(総務省HPから抜粋)。ただし、次の⑴~⑹は不開示情報に該当する。

*以下、めんどくさがりは箇条書き後ろの( )内だけ読まれたし

 

(1) 特定の個人を識別できる情報(個人情報)

(2) 法人の正当な利益を害する情報(法人情報)

(3) 国の安全、諸外国との信頼関係等を害する情報(国家安全情報)

(4) 公共の安全、秩序維持に支障を及ぼす情報(公共安全情報)

(5) 審議・検討等に関する情報で、意思決定の中立性等を不当に害する、不当に国民の間に混乱を 生じさせるおそれがある情報(審議検討等情報)

(6) 行政機関又は独立行政法人等の事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼす情報(事務事業情報)

 

(5)、(6)などはいかようにでも解釈できるので、相手方は重要な部分をここぞとばかりに塗りつぶしてくる。そこを文字数と文脈から「眼光紙背ニ徹ス」眼力で推察していく。ところが、最近はとみに、のりの量が増え「だ」「である」とか「と」「や」とか、文末と接続語しか読み取れない傾向にある。気になるところだ。

 

と、前置きが長くなったが、このたびの熊本県・教育長ブログ「文科省通知の読み方」は、そんな物騒なケースではない。文章のなかで絶対に必要な部分以外を塗りつぶしたらこうなりました、という内容である。

 

実は、タハラの文章講座でも「必要な部分以外を全部消せ」というワークがある。その分量が一番多かった文書を「The King of Wakarinikui(わかりにくい)」として称えるのだが、この栄誉に属するのは、圧倒的に中央官庁が発行した公文書に多い。

 

どこがムダなのか。細かい点は・教育長のブログに譲るとして、ポイントは「命令形以外は全部ムダ」だ。公文書をはじめ、ビジネス文書の根幹はすべて頼みごと、つまり命令形にある。ただし、それをストレートに表現するとカドが立つ。そこで「お願い申し上げます」などとオブラートにくるみながら発信者の意思を表示する。

 

そう、文書とは話し手による意思表示なのだ。ほかはすべて枝葉である、と心得ることがビジネス文書上達の第一歩である。みなさん、覚えていてね。