とある近所の飲食店の貼り紙を、いつも楽しみにしている。
『入院中のおばの見舞いのため、夜のみの営業とします』『腰痛のため、休業します』『スタッフ補充のめどが立たないため、席を間引いています』
なにがおもしろいか。期待をこえる情報を盛り込んでしまう、旺盛なサービス精神(ご本人にはたぶんそんなつもりはない)がである。
顧客がもとめているのは、「店が」「いつ」開いているかである。入店するか、断念するかの判断材料にしたいからだ。「店主が」「なぜ」は、ほとんどの顧客にとってムダ情報。そこにあえて力点をおくズレ方に、おかしみを感じてしまうのだ。
情報は、多ければ多いほどよいのではない。文章を書くことは、「書かなくていいことはなにか」を考えるのと同意義であるといっていい。絵やイラストもそうだ。
採用時のPRだって同じである。何を伝えるとより効果的か、加減乗除しながらいいかげんに調整する必要がある。
そこで、シューカツ生さんへのアドバイス。まず「自分らしさ」を知ってもらうという、主目的を忘れないこと。エピソードの伝達自体が目的ではない。また、あれもこれもとよくばりすぎると、「結局キミ、どんな人なの?」になってしまう。
採用側の方々へ。こと大企業に関して言えば、トレンドワードのSDGsをPRの主役にしないほうがいい。やって当たり前の話で、自社の差別化にはなりにくい。なにより「御社の、社会持続可能性をさぐる企業姿勢にひかれました」と、つかいまわしのセリフを、学生さんらからえんえんと聞かされるハメになりますぞ。