ひとつよろしくお願いします

外国語でどう表現すべきか、悩ましいことがあった。

 

シチュエーションはこうだ。留学中の家族が、引っ越し先が見つかるまでのあいだ、他人の家に転がり込み、やっかいになる。出ていく時期は不透明。そんなとき、相手先にどう謝意を伝える?使用予定言語は英語かロシア語だ。

 

日本語なら、おそらくこういう定型句を使う。

・しばらくご面倒をおかけします

・なにとぞ●●をよろしくお願いいたします

・本当にお世話になります

 

しかし英語もロシア語も、私の知る限りそのような表現は持たない。直訳するとイミフに響くだろう。

 

けっきょくは、「わたしどもは、あなた方の親切に深く感謝する」を言葉を変えて連呼(英語)。あとは適当にごまかした。

 

日本語には、今後生じるであろうトラブルなど、もろもろの現象について、先回りして謝意を述べておく表現が豊富だ。責任解除的な逃げのスタンスというべきか。だが他言語では、もともとそんな考え方が希薄なのだろう(知らんけど)。

 

ちなみに以前、家族の一人が、台湾で「今後とも、密なおつきあいをひとつよろしくお願いいたします」のあいさつの通訳を、上司から強く命じられたことがある。そんな表現ありません、と断ったものの、再度迫られたため、やむなく直訳したらしい。

 

すると相手は、スマホを取り出し「用事があったら、いつでも連絡してね」と、にこやかにLINEのIDを示した。同じアジア人でも「ひとつよろしく」は通用しないようだ。