最近、私事が立て込んでコラムを書く心の余裕がなかった。ということで、手っ取り早くドイツネタで。
年明けすぐ、何回目かになる渡独を果たしてきた。日本に戻ってまず感じるのは「小っさ」。
人間が小さく見える。巨人の国から帰ってきたガリバーの心境だ。ドイツ国民の平均身長は女性166㎝、男性が180㎝と日本人と10㎝近い差だが、実感値としてはもっと開きがある。
その日本人の中でも小柄な私が、巨人の国で一番困るのはトイレだ。座っても足がつかない。観劇で腰掛けてもヒールを履いていないと、床に達しない。一方で、不思議で仕方ないのは、ベットサイズである。近代的なホテルなら良いが、昔ながらのベットは、ここは手術台ですか、という狭さである。
食べ物も大きいうえ、一口で収められるサイズにカットしてくれていない。おまけに、黒パンをはじめ硬いものが多い。気合いを入れて噛みくだかないと咀嚼(そしゃく)〜嚥下(えんげ)のプロセスに至るのは難しい。帰国まもなく、コンビニサンドにドイツ流で噛みついた結果、勢い余って口内血まみれになったことがあった。
あとは服のサイズが合わない。バーゲンはXXSから探しはじめる。ただこうしたサイズは売れ残りが多いため、わりと選択肢が豊富である。左右で服を物色しているのは、子どもか、たいていは小柄なアラブ系の女性だ。ドイツの人口の18%はこうした移民の人だ。ゲルマン系だけであればもっと高いであろう先ほどの平均身長も、さまざまな人種からなる移民によって値が緩和されているのだ、となれば納得がいく。
ちなみに先日、某国で再任した巨体190㎝の大統領は、ドイツからの移民三世である。19世紀後半、祖父フリードリッヒはドイツの寒村kallstadt村から渡米、ゴールドラッシュを当てこんだ土地売買で成功をつかんだ。財を成したのちは母国への帰郷を渇望した。嘆願書まで提出したものの、当局より兵役不履行を理由にすげなく断られた、というエピソードがある。
「祖父の因果が孫に報い」あるいは「ドイツの仇をアメリカで討つ」なのか。移民に対する不寛容と戦争への忌避意識は、案外、こんなところから来ているのかもしれない。